吉左右頒布 平成26年長月号
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吉左右頒布
夜熱以前午熱同 夜になっても暑さは昼間と変わらない
開門小立月明中 門を開き外に出て月明かりのもとしばし佇んでみる
竹深樹密虫鳴処 竹や木々が深々と生い茂り虫がしきりに鳴いている
時有微涼不是風 と、風が吹いたわけでもないのに微かな涼しさが漂ってきた
楊万里 作
風の音に驚いた藤原敏行、静まるなかにも涼を覚えた楊万里。心研ぎ澄ませば、忍び寄る季節の移ろいをそこはかとなく感じられる頃となりました。
今月は、秋の爽やかさをライトモチーフにお品書きを調えてまいります。どうぞ、ご賞味ください。
* 新涼や 尾にも塩ふる 焼肴 真砂女 *
長月の知っ鷹鰤(しったかぶり)
〽︎影がさすよで 小窓をあけりゃ 風になよなよ アレ 萩の花
この花の可憐さ健気さを表した、粋な小唄ではありませんか。そんな趣きを宿す萩の花はけっして「咲く」とは表現しません。「こぼれる」と言い回し、その繊細さを称えます。
この頃にいただくお菓子は「お萩」春は「牡丹餅」と、同じものでも季節に合った花の名で呼び分けているところも大和言葉の細やかさなのでしょうね。
話題はがらり変わって花札の図柄。萩を倒して寝床にする習性があるところから、猪との組み合わせで描かれています。
月に吠える
中秋の名月、今年は8日(月)に愛でることができます。
これにちなんだシュールなジョークを紹介しましょう。
時は太古。マンモス一頭を仕留めたお祝いの宴会で、一人の男が夜空を見上げてつぶやきました。「お月さんまでが祝福してくれているぞ、今夜は満月じゃ。ところで、みんなはどう考える? いま地球上に何人の人間がいるかは知れぬが全人類が一斉に大声を出せば、あのウサギの耳に届くだろうかなぁ?」 奇抜な発想に全員が「そりゃ面白い、やってみよう!!」と乗っかってきたのです。それどころか、隣組の人たちにも噂が伝わり「やろう、やろうッ」の高まりは予想以上の速さで次から次へと広がってゆきました。そして、とうとう「◯月×日◯時×分◯秒に、全人類はこぞって声を揃え月に吠えるよう」とのお達しが、全世界に徹底されるところまでなったのです。
さて、定刻が刻一刻と迫ります。「3、2、1、0ッ」
注目の瞬間、その声は月のウサギの耳に達したでありましょうか?
「届かない」と答える人がほとんどかと思えます。その理由は月にウサギがいないから、あるいは地球と月の間には真空地帯があって音は伝わらないから・・でしょうか。
この話自体がありもしない絵空事でなりたっていますから、そう硬く真正面に取り組んでもらっては正解が出ません。
確かに届かなかったのですが、真相はこうでした。
「3、2、1、0ッ」「全人類が一斉に声を揃えて大声を出すんだってぇ、一体どんな大きな声なんだろう?」 それを確かめたいため、みんな耳をすますだけだった・・・・・のです。
天国と地獄
23日(火)の秋分の日が、お彼岸の中日にあたります。
彼岸、彼の世の様子はお寺に掲げられた餓鬼地獄絵図などでご覧になったことがおありかと思いますが、ここではイソップ童話風に地獄と天国の違いを描いてみることにします。
ある日、森の中で晩さん会が開かれました。ホスト役の虎の家に動物たちが集まってきますが、いざ食事をとろうという段になって困ったことがおきました。虎は自分の体に合わせたフォークしかもっていませんでした。それは小さな動物の腕に比べて長すぎます。リスやネズミたちは躍起になって自分で自分の口元に食べ物を運ぼうとしますが、ポロポロポロポロこぼして一口も味わうことができなかったのです。
それを見たライオンが、こんなふうに言いました。
「テーブル代わりの切り株を囲んで、輪になって食事をしているのは幸いだ。自分で自分の口に運ぼうとするのじゃなく、どうだろう、それぞれが向かい合っている相手方に差し出してあげるっていうのは。そうすれば、虎くんのフォークの長さが丁度いかせて、好都合じゃないか」
百獣の王のグッドアイデアによって、その夜どんな小さな動物もおいしいものにありつくことができたのでした。
〽︎ 人に言えない 仏があって 秋の彼岸の 回り道
トクダネ! クイズ!!
当店の入口に飾らせていただいているビッグな茶碗。ここにトレヴィの泉よろしくコインを投げ入れてお帰りになるお客さんが増えました。年末には取りまとめ、しかるべきところに寄付しなくては・・と考えております。本場の伝説どおり、再びご来店いただけるためにも、コイン一枚のお心づけをお願いいたします。では、問題です。
あの茶碗一杯に一円玉を詰めると、いくらになるでしょうか?
来月31日(金)を締切とし、最近似値をお書きになった方に当店で使っていただける正解金額の金券を差し上げます。
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